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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

あたりはしーんと水をうったように静まりかえった。

死体の上にかけられてあった布がさっと取り除かれた。

「さあどうだ」

と同時に、

「うーむ、――」

杉田水兵は両眼をかっと開いて、死体の顔をじっと見つめた。リット少将はぐっと唾をのみこんで息をこらした。その次の瞬間、杉田の眼から涙がぽたぽた湧いてきた。彼は、

「ああ川上機関大尉!」

と、上ずった声で叫ぶと、両手で顔を隠して、おいおいと泣きだした。

「うむ、やっぱり川上だった」

と、リット少将は、「カワカミ」という名を呼ぶ杉田の声を聞いて、そうつぶやいた。

「どうです、閣下。杉田は、あのように涙を流して泣いています」

と、中尉は得意そうに相槌をうった。

杉田は、いつまでも声をあげて泣きつづけていた。

ああ、われらの川上機関大尉は、武運つたなく、遂に冷たい亡骸となり果ててしまったのであろうか。――

諸君!

嬉しいことには、事実は全くの反対であったのだ。杉田二等水兵は、嬉し泣きしているのであった。その死体は、見も知らぬ中国人であったのだ。

「川上機関大尉は、どこかに必ず生きている!」

そう思うと、嬉し涙が、あとからあとからと湧いて停らない。