轻松读懂日语经典作品
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ひのついたかかと
火のついた踵
宮本 百合子
「中央公論」中央公論社、1922(大正11)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,781 字 · 34 页
振一郎 ――お互のことだ。……要求は限りないものだからね。人間は、五のものを与えられると、必ず七のものまで得ようとする。――
みさ子 ――
振一郎 とにかく、僕は失礼させて貰うから、皆さんによろしく。――勿論用があったら、いつでも来ていいんだからね。
来た垂帳の方から去ろうとする。みさ子、思わず後を追い、何か云おうとする。が、やめ、元気を失い、詰らなそうに、ぐったりと傍の長椅子にかける。
みさ子 (ひそやかに、独白)ああ、どうして、ああなんだろう……?
長椅子の端に肱をつき、凝っと前を見つめ考えに耽る。やがて、寂しさに堪えられないらしく、急に立上り、書棚の傍のベルを押す。きよ登場。
きよ お呼びでございますか?
みさ子 ああ、あのね、私の部屋へ行って、やりかけのスティッチを持って来て頂戴な。
きよ はい。(去る)
みさ子所在なさそうにヌックの方に行き、腰を下して、花壺の花をいじる。寧ろ、心は内へ内へと沈み、指先だけが無意識に微かな運動をするという風。
きよ、愛らしい紅色の繻子張小籠を持って来る。
きよ これでよろしゅうございますか?
みさ子 有難う――鋏があったかしら(籠の中を一寸検べる)ああ、これでいいわ。