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ひのとり
火の鳥
「愛と美について」竹村書房、1939(昭和14)年5月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,740 字 · 76 页
虫が、よすぎるわよ。男には、別に、男の仕事というものがあるのでございますから、その一生の事業を尊敬しなければいけません。わかりまして?」
数枝は、不愉快で、だまっていた。
さちよは調子に乗って、
「女ひとりの仕合せのために、男の人を利用するなんて、もったいないわ。女だって、弱いけれど、男は、もっと弱いのよ。やっとのところで踏みとどまって、どうにか努力をつづけているのよ。あたしには、そう思われて仕方がない。そんなところに、女のひとが、どさんと重いからだを寄りかからせたら、どんな男の人だって、当惑するわ。気の毒よ。」
数枝は、呆れて、蛮声を発した。
「白虎隊は、ちがうね。」さちよの祖父が白虎隊のひとりだったことを数枝は、さちよから聞かされて知っていた。
「そんなんじゃないのよ。」さちよは、暗闇の中で、とてもやさしく微笑んだ。「あたし、巴御前じゃない。薙刀もって奮戦するなんて、いやなこった。」
「似合うよ。」
「だめ。あたし、ちびだから、薙刀に負けちゃう。」
ふふ、と数枝は笑った。数枝の気嫌が直ったらしいので、さちよは嬉しく、
「ねえ。あたしの言うこと、もすこしだまって聞いていて呉れない? ご参考までに。