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ひのとり
火の鳥
「愛と美について」竹村書房、1939(昭和14)年5月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,740 字 · 76 页
」
「いうことが、いちいち、きざだな。歴史的氏の悪影響です。」数枝は、気をよくしていた。
「あたしは、ね、歴史的さんでも、助七でも、それから、ほかのひとでも、みんな好きよ。わるい人なんて、あたしは、見たことがない。お母さんでも、お父さんでも、みんな、やさしくいいひとだった。伯父さんでも、伯母さんでも、ずいぶん偉いわ。とても、頭があがらない。はじめから、そうなのよ。あたし、ひとりが、劣っているの。そんなに生れつき劣っている子が、みんなに温く愛されて、ひとり、幸福にふとっているなんて、あたし、もうそんなだったら、死んだほうがいい。あたし、お役に立ちたいの。なんでもいい、人の役に立って、死にたい。男のひとに、立派なよそおいをさせて、行く路々に薔薇の花を、いいえ、すみれくらいの小さい貧しい花でもがまんするわ、一ぱいに敷いてやって、その上を堂々と歩かせてみたい。そうして、その男のひとは、それをちっとも恩に着ない。これは、はじめからこうなんだと、のんきに平気で、行き逢う人、行き逢う人にのんびり挨拶をかえしながら澄まして歩いていると、まあ、男は、どんなに立派だろう。