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ひなわじゅう
火縄銃
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,117 字 · 19 页
這入って来るなり寝台の上の兄の死体の方に目を馳せたが、その顔は恐怖のあまりひどく硬張っていた。私はなぜか、二郎の姿を見ると急に動悸がはげしくなって来た。来てはいけない所へその人がやって来た様に思ったからだ。凡ての状況が、一人の人に向って、お前が犯人だ、と指しているではないか。火繩銃は二郎のものだし、窓の外の足跡は下駄の跡だが、今目の前にいる二郎は和服を着ている。それに、彼等兄弟の家庭内のごたごたを私はよく知っていた。
「これは、いったい、どうしたのです」
肩で息をし乍ら、這入って来るなり二郎は誰にともなく呶鳴った。
「君が二郎君だね」
刑事が鋭い口調で訊ねた。
「そうです」
二郎はそこに居並んだ、緊張し切た人々の顔を見ると、一層顔を青くして、震え声で答えた。
「じゃ、これは、この火繩銃はあなたのでしょうね」
刑事は机の上の猟銃を示して聞いた。それを見ると、二郎はハッと驚いたらしかったが、でも平然と答えた。
「そうです。しかし、それがどうかしたのですか」
刑事はそれにかまわず畳みかけた。
「今迄あなたはどこへ行っていたのです」
この質問に二郎は一寸詰ったが、やっと小さな声で呟くように言った。