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かそうこくふうけい

火葬国風景

海野 十三

「帝都日日新聞」1935(昭和10)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,334 字 · 37 页

青空文庫

そこから先は夜店がなくなって、急に日が暮れた様な寂しい通りだった。彼は当てもなく、足を早めた。

そのときだった。丁度そのとき、彼の背後から声を懸けたものがあった。

「モシモシ、甲野君……」

突然わが名を呼ばれて八十助はギョッとその場に立ち竦んだ。背後を見てはならない――誰かが警告しているように感じた。といって呼ばれて振り向かずに居られようか。

「モシモシ、甲野君じゃないか……」

「あ――」

彼は思い切って、満身の力を込めて、背後を振りかえった。

「呀ッ」

そこには背のヒョロ高い、眼の下に黒い隈の濃いカマキリのような男――あの鼠谷仙四郎の幽霊が突っ立っていた。

「やア甲野君」

とその怪物はニヤニヤ笑いながら声をかけた。

「キ、キミは誰ですウ――」

「誰だとは、弱ったネ」と怪物は一向弱っていなそうな顔で云った。「僕は君と中学校で机を並べていた鼠谷……」

「鼠谷君なら、もう死んだ筈だッ」

「そいつを知っていりゃ、これからの話がしよいというものさ。はッはッはッ」と彼は妙なことを云った。「なぜ死んだ人間が、生き返って君達に逢うことができるのか――そいつは暫らく預かっておくとして、もしそんなことが出来るとしたら、君はそれがどんなに素晴らしい思いつきだと考えないか」