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はいかぐら
灰神楽
江戸川 乱歩
「大衆文藝」1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,262 字 · 27 页
「でも、そうでも考える外に方法がないじゃないか。この火鉢の中にボールがある以上は。そして、丁度その時鉄瓶の覆ったという一致がある以上は。君は時々この庭の中へボールを打ち込みはしないかい。そして、ひょっとして、その時探しても、植込みが茂っていたりして、分らないままになって了った様なことはないだろうか」
「それは分らないけれど……」
「で、これが最も肝要な点なのだが、そのボールが塀を越したという時間だね、それが若しや兄さんの死んだ時と一致してやしないかい」
その瞬間、二郎はハッとした様に、顔の色を変えた。そして、暫く云い渋ったあとで、やっとこう答えた。
「考えて見ると、それが偶然一致しているんだ。変だな、変だな」
そうして、彼は俄にそわそわと落ちつかぬ様子を示した。
「偶然ではないよ。そんなに偶然が幾つも重るということはないよ」庄太郎は勝ちほこって云った「先ず灰神楽だ。灰の中のボールだ。それから君達の打ったたまが塀を越した時間だ。それが悉く兄さんの死んだ時に前後しているじゃないか。偶然にしては、余り揃いすぎているよ」
二郎はじっと一つ所を見つめて、何かに考え耽っていた。