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はいかぐら
灰神楽
江戸川 乱歩
「大衆文藝」1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,262 字 · 27 页
五
五
庄太郎の突拍子もない計画は、まんまと成功したのである。あの調子なら、二郎は今に耐らなくなって、彼が事実だと信じている事柄を、警察に申出るに相違ない。よしその以前に、庄太郎が嫌疑者として捉われる様なことがあっても、二郎の申出さえあれば、訳なく疑いを晴すことが出来る。彼の捏造した推理には、単なる事情推定による嫌疑者を釈放するには、十分過ぎる程の真実味があるのだ。のみならず、それが自分の過失から兄を殺したと信じている二郎の口によって述べられる時は、一層の迫真性が加わる訳でもあった。
庄太郎は最早や十分安心することが出来た。そして、昨日の刑事がいずれ又やって来るであろうが、彼が来た時にはああしてこうしてと、手落なく謀を廻すのであった。
その次の日の昼過ぎに、案の定○○警察署刑事 ○○○○氏が庄太郎の下宿を訪れた。宿の主婦が囁き声で、
「又この間の人が来ましたよ」
といって、その名刺を彼の机の上に置いた時にも、彼は決して騒がなかった。
「そうですか、ナニいいんですよ、ここへ通して下さい」
すると、やがて階段に刑事の上って来る跫音が聞えた。だが、妙なことには、それが一人の跫音ではなく、二人三人のそれらしく感じられるのだ。