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むもうだん
無毛談
――横山泰三にさゝぐ――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,319 字 · 17 页
そのくせ、じゃア、私のお部屋へ寝にいらっしゃいと云っても、来ないのよ」
「それみろ。あいつはヒネクレ根性の、悪党なんだ。あんな不潔な、可愛げのない奴、追いだしてしまえ」
けれども、妹はまだトン子さんに信用おいて、兄貴の方の疑いは、内々すてることができないのである。
私の方は相も変らず郵便の時間がくると、ソワ/\落付かない。おトンちゃんのことなど気兼ねしていられないから、便所へ立ったり、水をのみに行ったり。ある日、また、折よくその途中に郵便配達夫の影を認めた。
さっそく玄関から出ようとする、とたんにサッと飛びだしてきてヒラリと私をすりぬけたのは、申すまでもなくおトンちゃん、もう私なんか目もくれず、下駄をはこうとするから、
「コラッ!」
私は大喝して、夢中であった。逆上して、とびかゝって、おトンちゃんの襟首をつかむ、然し、私は落付いていた。私は大男であり、先方は小柄の女だから、襟首をつかまえれば、それまでのことだと思ったからだ。
襟首を握った私の手は、とたんに宙をぶらぶらした。おトンちゃんは振りはらい、手の下をくゞり、扉を蹴るようにあけて、ハダシで一直線に郵便箱へ走っていた。