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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
房枝は駈けだしながら、
「お名残りおしゅうございますが、これが小雪の最後の孝行ですの。お父さま、お母さま、おたっしゃに」
「えっ、小雪。ああお待ちなさい。あなた、あの娘は、自分で小雪だと申しましたよ」
「ふーん、そういえば成程。おい、よびかえさなければ、おれにつづけ」
博士と道子夫人とは、房枝の後を追うため、つづいて走りだした。
だが、はたして、房枝に追いつくことが出来るであろうか。爆発の時刻は、午後九時、もうすぐそこに近づいている。房枝は、両親と大切な生産力の一つである工場とを救わんがために、一命を捨てる決心をし、今爆薬の花籠を抱いて、爆発しても被害のすくない安全な場所を求めて死の駈足をはじめたのであった。
ここではちょっと脇道へそれるが、青年探偵帆村荘六の姿を、読者のみなさんにお知らせしたい。
帆村荘六は、今、愛宕山の上に立っている。そこには、警視総監をはじめ、例の田所検事やその他、要路のお歴々が十四、五名もあつまり、まっくらな山の上で、何ごとかを待っているのだった。
「おい、帆村君。時刻は、あと一分だが、ほんとうに大丈夫だろうね」
そういったのは田所検事であった。