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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
右足が、またのあたりから足首まで、板片をあて、繃帯で、ぐるぐると、太くまいてあった。
「曾呂利本馬さん。手を貸してあげましょうか」
通路で、房枝が向こうから駈けてきて、その足のわるい青年に、こえをかけた。曾呂利本馬という妙な名が、その青年の芸名だった。
「なあに、大丈夫」
と、曾呂利青年は、うなずき、
「ねえ、房ちゃん、いつもいうとおり、僕なんかにかまわないがいい」
そういって、彼は、あぶなっかしい足どりで、食堂の入口をまたいだのだった。
この気の毒な曾呂利青年を、房枝がなにかと世話をしてやると、そのたびに、トラ十が、目をむいて、口ぎたなく叱りつけた。
(おい房公。お前、手を出すな。その曾呂利本馬てえ野郎は、正式の団員じゃないぞ。メキシコのどぶ川の中で、あっぷあっぷしていた奴を、おせっかいの団長が、えりくびとって引上げてやったのさ。それからこっち、いつの間にやら、ミマツ曲馬団のすみっこで、こそこそうごめいている奴さ。とんちきな芸名までもらいやがって、歯のない牝馬のうえにのっかったと思うと、もうあれ、あのとおり、自分の足を、ひんまげてしまった。ざまあみろというんだ。