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ちち
父
「人間」1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,298 字 · 15 页
キザな言い方であるが、花ひらく時節が来なければ、それは、はっきり解明できないもののようにも思われる。
ことしの正月、十日頃、寒い風の吹いていた日に、
「きょうだけは、家にいて下さらない?」
と家の者が私に言った。
「なぜだ。」
「お米の配給があるかも知れませんから。」
「僕が取りに行くのか?」
「いいえ。」
家の者が二、三日前から風邪をひいて、ひどいせきをしているのを、私は知っていた。その半病人に、配給のお米を背負わせるのは、むごいとも思ったが、しかし、私自身であの配給の列の中にはいるのも、頗るたいぎなのである。
「大丈夫か?」
と私は言った。
「私がまいりますけど、子供を連れて行くのは、たいへんですから、あなたが家にいらして、子供たちを見ていて下さい。お米だけでも、なかなか重いんです。」
家の者の眼には、涙が光っていた。
おなかにも子供がいるし、背中にひとりおんぶして、もうひとりの子の手をひいて、そうして自身もかぜ気味で、一斗ちかいお米を運ぶ苦難は、その涙を見るまでもなく、私にもわかっている。
「いるさ。いるよ。家にいるよ。」
それから、三十分くらい経って、
「ごめん下さい。