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うし

牛

坂口 安吾

「文藝春秋 第三一巻第五号」1953(昭和28)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,971 字 · 25 页

青空文庫

それも中農と小農の中間ぐらい、むしろ小農に近いぐらいの農であった。それと神社の収入を合せて、どうやら子供を大学までやることができたのだ。

だから光也が学校で学んでいるのは、神社に縁のある学問ではなく、農科であった。今のところ、彼の家のものか、神社のものか、村のものか、ハッキリしない山林があって、その一部はどうやら彼の家の財産に分けてもらえそうになっている。将来その山林に光也の新しい農業知識を役立てようというわけだ。

彼の父はふだんはただの百姓だが、さすがに事があると神様の遠縁らしい威風を示す習性をもっていた。倅の暴行事件が起ったときには、年に一度のお祭にも見せたことのない高揚した威厳を示した。

「お前はきっと犯人ではないな」

「ウン」

「神様に誓うか」

「ウン」

「では、不浄をたち、拝殿にこもれ。潔白なら神様が犯人を探して下さる。犯人なら神様が息の根をとめて下さる。どっちにしても、それまで外へでられないぞ」

山の下の鳥居をくぐってから、三丁も杉の林をうねって山上へ登らなければならない。光也はセンベイ布団をひッかついでそこを登った。光也が拝殿の中へはいると、父は扉をとじて大きな錠をかけて戻った。