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うし
牛
「文藝春秋 第三一巻第五号」1953(昭和28)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,971 字 · 25 页
朝晩握り飯と水がとどき、その時だけ大小の用をたすことができた。駐在所の巡査が事件のことで会いにきて、錠のかかった扉をはさんで光也と用談をすませた。そして、
「これは世界で一番オッカナイ牢屋だ」
と呟きながら、汗をふきふき山を降りて行った。
拝殿へとじこもって一週間ぐらいすぎた日のことである。父は朝の握り飯と水をぶらさげて、拝殿の扉の錠をあけた。すると、扉の隙間に一通の手紙が差しこまれているのを発見した。女の筆蹟であった。
「O・Tは悪い女。虚栄と偽懣と無恥。全女性の敵として彼女は軽蔑される。私はあなたの潔白を信じ、彼女に怒りを覚える」
筆者の署名はなかった。
父はこの手紙の意味はだいたい理解できるように思った。O・Tというのは暴行をうけた娘であろう。
筆者が女であるとすれば、夜陰に乗じてこれを届けたに相違ないが、それは丈夫もなしがたいような大胆不敵な所業であるから、父は意外に感動した。
彼は倅の足を蹴とばした。それぐらいにしてもなかなか目をさまさないタチなのだ。すると足の位置から光也が顔をだして、親も神様も呑みこむようなアクビをした。
「これを読め」