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ぎゅうにゅうとうま
牛乳と馬
豊島 与志雄
「思索」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,248 字 · 25 页
こちらからあまり話をしたくなかった。でも、警戒したわけではない。彼の言行のうちには、なにか普通の作法に外れたようなところがあり、それが傲慢から来るのか天真爛漫から来るのかは分らないが、悪心はないように見えるのだった。それで、わたしはいい加減な受け答えをしてるうちに、あとで気付いたのだが、家の事情をだいたい話してしまったことになった。お兄さまは、日華事変中に中国で戦死されたこと、お姉さまが肋膜を病まれたあと、肺に浸潤が残っていて、避暑と保養とをかねて、お母さまとわたしと三人で、この高原の別荘に来ていることなど。
ぽつりぽつりと短い言葉を交わしながら、とうとう家の近くまで来てしまった。
「ついでに、お母さんにちょっとお目にかかっていきましょう。お願いしたいことがあるんです。」
嫌だともわたしには答えられなかった。
彼は馬がいるからと言って、家の中にははいらなかった。
お母さまは、いつもおおまかでのんびりしていらっしゃる。馬の轡をとってる彼と、門の前で立ち話をしながら、始終にこにこしていらして、時々ほほほと低くお笑いなすった。彼は、さっきの橋の上の出来事を話し、嘗て中国でお兄さまと交際があったと言い、自分はこちらに避暑に来てるのだが、友人たちは東京に帰ってしまい、退屈のあまり馬ばかり乗り回してるのだが、ついては