轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きつね

狐

山本 周五郎

「産報」1942(昭和17)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,471 字 · 17 页

青空文庫

一

一

いちばんはじめに、誰が云いだしたかわからなかった、また、はじめのうちは誰もほんとうだと思う者はなかった、「まさか、いまどきそんなばかなことがある筈はない」そう云って笑う者が多かった、「そんならためしてみるか」「いいとも」そんなことがいくたびとなくあった、そうして、だんだんと笑う者がなくなった。けれども梅雨期にはいるまではそれほどひろまってはいなかった、ごく近しいなかまのあいだで、ひそひそ囁きあいはするが、内容が内容なので迂濶な者に聞かれたくないという気持がみんなにあった。それが五月(新暦六月)にはいって、じめじめした雨の日がつづくようになったある夜、さらに思いがけない出来事がおこって、噂は本丸やぐら番ぜんたいにひろまる結果となった。……その夜いつつ(八時)頃になって、非番のはずの斧塚新五郎がふいと詰所へあらわれた。しかも、かなり酒に酔っているらしい、かれは詰所へはいって来ると、詰めていた十人の番士たちをぐるっと見まわして、

「おい、貴公たちみんな知っているのか」といきなり云った。そこにい合わせた者の半数にはなんのことかわからなかった、すぐわかった者も黙っていた、「お天守に妖怪がでるという話を聞いたんだ、貴公たちも知っていたんだろう」