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ろうしつき
狼疾記
「南島譚」1942(昭和17)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,540 字 · 47 页
凡てが言われ、考えられた後に結局、人は己が性情の指さす所に従うのだ。その論議・思考と無関係に、である。そして爾後の努力は、凡て、その性情の為した選択へのジャスティフィケイションにのみ注がれるであろう。考えようによれば、古往今来のあらゆる思想とは、各思想家がそれぞれ自己の性情に向って為したジャスティフィケイションに外ならぬではないか。……」
(註1) このひねこびた憐れな少年は、その後二つの異った希求に烈しく悩まされた。「あらゆる事柄(あるいは第一原理)を知り尽くしたい」という慾望と、「出来る限り多くの事物が(あるいはその事物の原因が)自分の理解を絶した彼方にあればいい」という前のとはまるで反対の奇体な願望とであった。前者は誰にでもある・成人の言葉でいえば「自己を神にしたい」慾望だったが、後者は「この世界を絶対信頼に値する・確乎たるものと信じたい」という・その逆の――つまり、この世界の不確かさ・哀れさに対する恐怖から生れた強い希求だった。「自分のようなチッポケな存在から凡てが理解されてしまうような世界では、その中に棲むことが何としても不安だ。自分などにはその一端すら理解できないような・大きな・確乎たる存在に身を任せたい」