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ねこはち
猫八
岩野 泡鳴
「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页
これは近眼の言葉であった。
「もし軽薄な人なら、軽薄な作をするのが当り前で、――それを好いたり、嫌ったりするのは読者がわの勝手だろう」
「やはり、お客次第でげすか、な」猫八は主人の説をこう受け取った。そしてそれに嬌えこむ気になって、「しかしずいぶん茶気のある人で、わたくしは偉いと思いますが?――」
「偉いにも、いろいろあるから、ね」
「わはッ、はッ」と、二三名の者がいっしょに声を挙げた。
「先生」と、これまで一言も言わなかった書生らしい人が言葉にその神経質らしい口調を帯びさせながら、初めて口を出した。「わたくしは久米氏の物を一つも読んでおりませんから、あの人の事については何事も言う権利はございませんが、――創作にはどうもその作者の人物が裏づけられていないと深くないようにわたくしには思われますが――?」
「君はいつも理想主義者的に物を言う人だが、いかにその反対のげんじつ主義者だッて、それはけっして否定しちゃアいません」
「それなら、安心ですが――」
「ただ君の言うようなことにばかり僕らは停止してはいない」
「そこがどうも」と、一方は小首を傾げた。
「たとえその人の人格が出たとて、その人格的生活が出ていなけりゃアやッぱりぐたい的にはならないではないか?」