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ねこはち
猫八
岩野 泡鳴
「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页
に何となく悲しかった。
「わずかだが、ね――」気が利かないでもなかった高見さんが、外へ出てから円助二枚をこッそり渡してくれたので、自分もちょッと気を取りなおすことができた。そしてそれがためにだろう、あとからついてきて、
「散歩がてら送って行きます」と皆に言葉をかけた主人に対しても、いっそう敬意を払うことができた。が、自分ながら――いやな習慣から出たのだろうが――なんて、けちな根性だろうと卑しまれた。そしてなろうことなら、あすからでも芸人をやめたかった。
今や自分が気に懸るのは天気ばかりであった。いつ雨が降ってくれるのだろうと空を仰ぎみつつ、自分は皆の後からひょこりひょこり足を運んで行って、道が薄暗くて誰とも分らない人に聴こえるよう、
「虎――猿――豚、今夜はほんとに動物の話ばかり出ました」
「それに、君のかわず、さ」返事は知識がおのであった。
ふとこんにゃく問答の神経質を思いだすと、天神さまといっしょに前方を語り合って行く声がしている。やがて廃兵院の森を過ぎると、二三間で自分の長屋横丁の入り口なので、
「この奥がわたくしの住居ですから、むさいところですけれども、もしお通りすがりにはお立ち寄りを願います」