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ねこはち

猫八

岩野 泡鳴

「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页

青空文庫

この俳優には、原文を引くと、『もう、八歳になる子があった。そしてその子は去年初舞台を踏んで彼と同じく否、彼よりももッと正式な、新派俳優になる未来をもっていた。彼はその子をけっして三枚目にはしたくないと思った』」

「………」この本読みを聴いて猫八はえらいところへ飛びこんできたものだと思われた。この思いは自分でも少しおおげさな考えだとは承知しながら、まるで自分の事を言われているようであった。自分には男の子が四人あって、総領は十四で高等一年、次ぎは十二で尋常五年、いずれも出来がよくて級長をしている。この十二のが父親の真似が上手で、しかも父親以上の芸を持ってるが、それでも第二の猫八にはしたくないのである。否、父親が猫の喧嘩や動物の声を真似して、高座のうえから客の機嫌を取ってるところを子供に見せたくないためにこそ、早くからわざわざこんな不便な郊外を選んで住んでるのだ。猫が虎に変っても、そこにたいした相違はない。

「彼の振られた役というのは、ただ虎の一役だッた」主人が読んでるのはその小説の本文らしかった。「人の名ではない。ほんとのけだ物の虎に扮する一役だけだッた。