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さる

猿

宮本 百合子

「サンデー毎日」1922(大正11)年7月10日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,437 字 · 11 页

青空文庫

すっかりぴんぴんして、他の羊どもと大巫山戯(ふざけ)をやっていたもの。

母親 (棚から皿小鉢をおろしながら)よかったね。私は阿父さんの留守の間に一匹でも子供等に死なれちゃあ堪らないと思ったからね。(火をほげたり、鍋を掻き廻したりする)

ヨハネス、エッダの傍に行き、

ヨハネス 阿父さんは今日も帰らないの?

エッダ もう二晩泊るんだって。――町から来た人が阿父さんの言伝てを持って来たわ。

ヨハネス 今度の市には、俺(わし)も行って見たいな。――エッダ、一緒に行かないか?

エッダ どうするの?

ヨハネス 賑やかな市街(まち)の様子を一緒に見るの――何か買ってあげるよ。

エッダ 詰らないわ。阿父さんは、町の女や男は、それは、それは、小ざっぱりとしているんだって云ってよ。もう種々(いろん)な物を一杯飾った店ばかりなんだって。――そんなところへ行って、たった一本飾紐(リボン)位買ったって――それに、着物もありゃあしないわよ。

ヨハネス 衣裳なんぞは、俺もないけれど――綺麗なところを一緒に見るのはいいじゃあないか、皆俺たちの物ばかりだと想えばいい。

エッダ (おかしがって)ははははは、たった一クローネで? はははは阿母さん! ヨハンたら、たった一クローネで、市中の物を買い占めるんだって!