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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

れまいと、捻じ合いひしめき合っているのであるから、往来の人達は足を止め、店から小僧や下女や子供や、娘やお神さんや主人までが、飛び出して来て眺めやった。

が、勘右衛門も京助も、そのようなことには感付かないかして、いつまでも捻じ合いひしめき合うのであった。

その結果はどうなったであろうか?

二人の争いを見守りながら、二人をグルリと取り巻いている、町の人達の間を分けて、痩せぎすで長身くて色が白くて、月代が青くて冴え冴えとしていて、眼に云われぬ愛嬌があって、延びやかに高くて端麗な鼻梁に、一つの黒子を特色的に付けて、黒絽の単衣を着流しに着て、白献上の帯をしめて、細身の蝋鞘の大小を、少しく自堕落に落とし目に差して、小紋の足袋に雪駄を突っかけた、歌舞伎役者とでも云いたいような、二十歳前後の若い武士が、勘右衛門と京助とへ近寄って来たが、――そして真ん中へヌッと立ったが、

「これは松倉屋のご主人で、京助などという手代風情と、このような道の真ん中などで、何をなされておいでなさる。みっとものうござる、みっとものうござる……。京助々々何ということだ。ご主人様と争うなどと! ……え、そうか、ふうん、なるほど、ご内儀の云い付けでその包物を、どこかへお届けしようというのか。