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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
のみならず高い天井などからは、瓔珞を垂らした南京龕などが、これも物々しく下げられてあるので、見る人の眼を奪うには足りた。で、日中であろうものなら、硝子窓から射して来る日光が、蒐集棚の硝子にあたり、蒐集木箱の硝子にあたり、五彩の虹のような光を放ち、それらの奥所に置かれてあるところの、古い異国の神像や、耳環や木乃伊や椰子の実や、土耳古製らしい偃月刀や、亜剌比亜人の巻くターバンの片や、中身のなくなっている酒の瓶や、刺繍した靴や木彫りの面や、紅、青、紫の宝玉類を、異様に美々しく装飾し、もしそれが夜であろうものなら、南京龕に燈された火が、やはり硝子や異国の器具類を、これは神秘的に色彩るのであった。
しかしこれらの部屋の構造も、そこに置かれてある異国の古道具も、今日の眼から見る時には、安物でなければ贋物なのであって、誠に価値のある物といえば、皆無と云ってもよいほどであった。いやもっと率直に云えば、享保年間のその時代においても、少し利口な人間であり、長崎などと往来し、紅毛人などと親しくし、多少商才のある人間であったから、こういう部屋の構造や、こういう異国の古道具などは、造ることも出来れば蒐めることも出来、したがって高価に売りつけることも、苦心もせずに出来るのであった。