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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
だがもしそれが反対となって、異国の事情を知らない者などが、この部屋へ入って来ようものなら、何から何までが怪奇に見え、高雅に見えることであろう。
とまれこういう部屋を持った、刑部屋敷という一軒の家が、その左隣りに没落をして、廃墟めいた姿をさらしている、勘解由千賀子の屋敷を持ち、周囲に貧民の家々を持って、かなり豪奢に立っているのであった。
ところで当主の刑部という男は、そもそもどんな人物なのであろう。
年は六十で痩せていて、狡猾尊大な風貌をしていて、道服めいた着物を着ていて、手に払子めいたたたきを持ち、絶えず口の中で何かを呟き、隙のない眼でジロジロ見廻す。――と云ったような人物であった。
しかし刑部はめったのことには、蒐集室へは現われなかった。いつも奥の部屋にいるのであった。とはいえ見張ってはいるものと見えて、いかがわしい客などが入り込んで来ると、扉をあけてチョロチョロと入って来て、払子を揮って追い出したりした。
宝石や貴金属の鑑定には、名人だという噂があり、贓品などをも秘密に買って、秘密に売るという噂もあった。で、大家の若旦那とか、ないしは富豪の妻妾などが、こっそり金の用途があって、まとまった金の欲しい時には、そうした宝石や貴金属を、ひそかにここへ持ち込んで来て、買い取って貰うということである。