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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

と、それとは反対に、掘り出し物の宝玉とか、貴金属などの欲しい者は、これはおおっぴらにここへ来て、蒐集室で探したり、直接刑部にぶつかったりして、手中に入れると噂されてもいた。

松平碩寿翁と醍醐弦四郎とが、この日蒐集室へ集まって、互いに相手を探るような話を、さっきから曖昧に取りかわせていたのも、宝石かないしは貴金属か、掘り出し物をしようとして、苦心している結果とみなすことが出来る。

曖昧な会話

「それでは松平碩寿翁様で。……が、それにしてはこのような、醜悪極まる勘解由店の、刑部屋敷などへおいでなさるとは、心得ぬ儀にござりますな」

こう云って醍醐弦四郎は、碩寿翁の返辞をしばらく待った。

何と碩寿翁は答えるであろうか?

答えは極めて簡単であった。

「私はな、珍器や古器物が好きだ。世間周知のことではないか、何の勘解由店の刑部屋敷が、醜悪極まる処であろう。すくなくも私にはよい所だ。ここへ来て探すと珍らしい物が、ヒョッコリヒョッコリと手に入るからの。……それはそうとお手前におかれても、身分ある立派なお武家らしいが、お手前こそ何の用事があって、このような処へ参られたかの? と訊ねるのが本当ではあるが、ナーニ私は訊ねないよ。