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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

兇悪の碩寿翁

(醍醐弦四郎と云ったあの男も、俺と同じ物を探しているらしい。油断のならない人物らしかったが、とんでもない競争者が出て来たものだ)

碩寿翁はこんなことを思いながら、弦四郎の立ち去ったその後においても、蒐集部屋の中をあちらこちらと、珍奇の器具類を調べながら、しばらくの間はさまよっていた。

(今日はこれぐらいで帰るとしよう)

で、碩寿翁は蒐集部屋を出たが、出たところに露路があって、それをウネウネと幾廻りかして、往来へ出なければならなかった。

こうして碩寿翁は露路口まで来た。と、その時一人の男が、誰かに追われてでもいるかのように、息を切らして走って来たが、そこまで来ると足を止めて、キョロキョロ四辺を見廻し出した。

「もし」と、碩寿翁を眼に入れたので、その若者は声をかけた。

「ちょっとお訊ねいたしますが、刑部屋敷と申します屋敷は、どこら辺りでござりましょうか?」

「刑部屋敷か、刑部屋敷はここだ。たった今私の出て来たところだ」

こう云うと碩寿翁は若者を見た。

「おやそうでございましたか。やっと安心いたしました。で、はなはだ失礼ながら、あなた様がお屋敷のご主人で?」