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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

で、乙女も侍女達も、盆地の方を振り返って見た。往来や田畑や家の門口などに、人々が集まって丘の方を見ていた。

その人達が注意したのであった。

「大丈夫だから先へ行こうよ」

この郷の長であると共に、この郷の神殿の祭司である、白河戸将監の一人娘の、小枝というのがこの乙女であったが、そう云うと侍女達を従えて、曠野の方へ漫歩をつづけた。

彼女達は彼女達が信じている、白河戸郷の守護神とも云うべき、神殿のご本尊の「唯一なる神」へ、野の花を捧げようと考えて、野の花を摘みに来たのであった。

小川が一筋流れていて、燕子花の花が咲いていた。と、小枝は手を延ばしたが、長目に燕子花の花を折った。と、小枝は唄い出した。

※(歌記号、1-3-28)メッカの礼拝堂に

信者らの祈る時、

帳の奥におわす

御像の脚に捧げまつらん

日の本の燕子花を。

「みんなも燕子花を取るがよいよ」

――すると侍女達も手を延ばして、各自燕子花を折った。

一行は楽しそうに歩いて行く。

灌木の裾に白百合の花が、微風に花冠を揺すりながら、幾千本となく咲いていた。

と、小枝は手を延ばして、その一本を折り取ったが、

※(歌記号、1-3-28)白楊の林に豹が隠れ、