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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
信者らが含嗽して
アラの御神を讃え奉る時、
回教弘通者のオメル様の墳塋へ、
ささげまつらん白百合の花を。
こう歌って侍女を返り見た。
「さあお前達も百合の花をお取り」
一行は先へ進んで行く。
一所に崖が出来ていて、小さな滝が落ちていた。岩燕が滝壺を巡って啼き、黄色い苔の花が咲いていた。その苔の花にまじりながら、常夏の花が咲き乱れていた。
※(歌記号、1-3-28)果物の木に匂いあり
御神水と黒石とに、
虹の光のまとう時
馬合点様の死せざる魂に
いざや捧げまつろうよ
常夏の花の束を。
小枝は常夏の花を見ると、こう朗らかに歌いながら、手を延ばして一本の花を折った。と、延ばした右の手の袖が、肘の辺りまで捲くれ上って、白い脂肪づいた丸々とした腕が、ムキ出しに日の光にさらされた。艶々とその腕が濡れて見えたのは、滝の飛沫がかかったからであろう。侍女の一人が小枝の背後で、ひざまずくように小腰をかがめて、地に敷こうとしている被衣の裾を、恭しく両手でかかげている。
と、小枝は歩き出した。
蜂が花から花へ飛んで、うたいながら蜜を漁っている。小鳥が八方から翔けて来て、この人達は害をしないよ――そう思ってでもいるかのように、一行の頭上や周囲で啼いた。