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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

陽炎がユラユラと上っている。花の匂いと草の匂いとが、蒸せるように匂っている。空は白味を含んではいたが、しかし一片の雲も浮かべず、澄んで遥かにかかっていて、その中に太陽が燃えながら、地上の一行を眺めていた。

手に手に野花を握り持って、楽しそうに歌いながら歩いて行く群の、女達十三人の姿というものは、画中の人物が歩くようであった。時々草叢から兎が飛び出したり、山猫が唸り声をあげながら、一行の行く手を横切って、ノッソリと林へ入ったりした。遠くに森林が連らなっていたが、その裾を一列の隊をなして、鹿の走って行く優しい姿が、一行の眼に見えもした。

この一行が進めば進むほど、その一行を惑わかすかのように、野には諸々の草や木の花が、数を尽くして咲いていた。

で、一行は我を忘れて、先へ先へと歩いて行く。

いつか白河戸郷を巡っている、連々たる丘からは遠く放れて、曠野の中央の辺りまで行った。

惑わしでなくて何であろう! 一行の進んで行く方角に、白河戸郷を敵と目して、日頃から争いをつづけている、丹生川平があるのであるから。

が、勿論彼女達といえども、五里のへだたりを持っている、丹生川平の領域へまでは漫歩をつづけて行きもしまいが、もしも丹生川平の住民が、この方面へ様子を見に来て、彼女達の姿を認めたならば、見遁して置くようなことはある