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でんえんのまぼろし

田園の幻

豊島 与志雄

「世界評論」1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,053 字 · 17 页

青空文庫

驚かれるのは、妊娠してることだった。

彼女が何故に杉の沼のほとりまで行ったか、それが疑問だった。ところが、噂の通り彼女には三人の情人があった。その三人とも、その日暮に河の堤防まで来てくれと彼女から呼び出しを受けたと、警察で、同じような申し立てをした。そして三人とも行かず、八幡様のお祭りで飲み騒ぎ、アリバイの証人は沢山あった。――後で、三人は村人の笑い話の種となった。

翌日の夜、私のところへ、宗吉が町の警官を同道してきた。私が花子と何の関係もなかったことを弁護するのに大骨折りをしたと、宗吉は警官の前で明けすけに話した。

三人立ち合いの上で、花子の小さな柳甲李は開かれた。意外なほど粗末な衣類ばかりだった。ぺらぺらの金紗の着物が最上等で、ふだん着同様な着物や帯や長襦袢ばかりだ。ただ、上等の帯締と絹のストッキングが幾つもあった。古めかしい金襴の袋にはいってる鬼子母神様の御守札があった。――後で分ったことだが、彼女は幼時ひどく病弱で、亡祖母は彼女のために鬼子母神をたいへん信仰して、守札はその祖母から貰ったものだった。

私のところにあった柳甲李のことは、どこからともなく村人たちの耳に伝わり、二様の解釈が下されたらしい。