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たざきそううんとそのこ
田崎草雲とその子
吉川 英治
「文藝春秋 夏期増刊号」1932(昭和7)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,568 字 · 40 页
費うばかりなので、この兄弟も、忽ち、煙草銭にも困ってきたので、骨肉相謀って、こんどは、遊びと収入を兼ねた「御内聞とり」という職業の新機軸をひらいた。
ぼんやりしている勤番者を見つけて、喧嘩を売る。又、八丁堀同心とみると、わざと突っかかる。どてらに、三尺帯か何か締めて、ふくらんだ無頼者みたいな恰好をしているので、手先が、奉行所の白洲へ、しょッ曳いてゆくと、必ず、
『脱ぎませいッ』
と、眼ざわりな、どてらを叱りつける。
待っていました、という調子で、どてらを脱ぐと、松井家が拝領した立て葵の紋服を下に着ている。
繩は打てない。奉行は狼狽する。
急に、役人輩が、こそこそし始めると、もう商売になっている。松井兄弟は、台本にできているセリフを大声でよみ始めるのである。
『早く処分をいたさんか、取調べは如何いたした。畏れ多くも、君祖家康公よりお直筆墨付きを頂戴しておるお目見得格、松井一族を、どう御処分あるや、拝見な仕りたい。まッた、拝領の御紋服を、不浄砂利にけがした儀についても、奉行自身の、あいさつが承りたい』
代り番こに、どなる。がんがんと喚く。
奉行は、手を焼いて、