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まちのしんり

町の真理

小川 未明

「帝国教育 589号」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,120 字 · 7 页

青空文庫

その死骸は犬ころの屍と同じく、草深い、野原のすみにうずめられてしまった。そして、その人の一生は、終わってしまったのであるが、彼の霊魂だけは、どうしても浮かばれなかったのです。

「文明だという、にぎやかな世の中へ生まれ出て、いったいどんなしあわせを受けたろう? 生きている間は、世の中のために仕事をした。死んでも形だけの葬式ひとつしてもらえなかった……これでは、犬やねこと同じであって、冥土の門もくぐれないではないか?」

霊魂は、まったく浮かばれなかったのです。りっぱなお寺へいって、お経をあげてもらい、丁寧に葬いをしてもらってから、冥土の旅につこうと思いました。

うす曇った、風の寒い日の午後のこと、この貧乏人の霊魂は、☆棺屋の前をうろついていました。

「だれか、冥土の途づれにするものはないかな。」と、人間を物色していたのです。

ここに、金持ちの老人がありました。何不足なく暮らしていました。ただ、もっと見たい、もっと知りたい、もっと味わいたいという欲望は、かずかぎりなくあったが、だんだん体力の衰えるのをどうすることもできませんでした。

寒い風の吹く中を、この老人は歩いてきました。