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まちのしんり

町の真理

小川 未明

「帝国教育 589号」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,120 字 · 7 页

青空文庫

棺屋の前にさしかかって、ふと、その店先にあった棺や、花輪が目に触れると、

「あの中へ、だれかはいるのだろうが、このおれも、いつか一度は、はいらなければならぬ。ああ、そんなことを思っても、気が滅入ってくる……。」と、頭を振って、通り過ぎようとしました。

これを見た霊魂は、冷たい青い笑いをしました。そして、金持ちの背中へ、そっと、しがみつきました。

「おお寒い! かぜをひいたかな。」

金持ちの老人は、思わず身ぶるいをして、家へ急ぎました。

それから、十日ばかりたつと、金持ちは、かぜがもとで死んだのであります。

生きている間は、自動車に、乗ったことのない貧しい男の霊魂は、いま金色の自動車に乗せられて、冥土の旅をつづけました。また、ありがたいお経によって、すべての妄念から洗い浄められた。金持ちの霊魂は、平等・無差別の生まれる前に立ち返って、二つの魂は仲よくうちとけていました。

「こうして途づれがあれば、十万億土の旅も、さびしいことはない。」と、金持ちの霊魂がいえば、

「なぜ、娑婆にいるうちから、こうして、お友だちにならなかったものか……。」と、貧乏人の霊魂は、いぶかしく感じました。