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ちょうないのにてんさい

町内の二天才

坂口 安吾

「キング 第二九巻第一四号」1953(昭和28)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,836 字 · 26 页

青空文庫

あれを安く、元値でゆずって下さいな。私に一モウケさせて下さい。恩にきますよ」

金サンは天元堂が市では一二を争う将棋指しだということを思いだしたから、

「お前は将棋が強いんだってね」

「それで身を持ちくずしたこともありましてね。賭け将棋に凝って、もうけるよりも、損をしました」

「それじゃアよほど強かろう。どうだい。あの床屋の鼻たれは、いくらか強いか」

「子供にしちゃア指しますが、私もあの年頃にはあのぐらいに指しましたよ」

「へえ、そうか。すると、子供であの鼻たれを負かす者も珍しくないな」

「そうですとも。あれよりも二三年下、小学校の五六年であれを負かすのも珍しくはありませんな。東京の将棋の会所には、同年配ぐらいで二枚落してあの子を負かすのが一人や二人はいるものですよ」

「そいつは耳よりの話だな。それじゃア、こうしようじゃないか。このマキを元値の二割引きで売ってやるから、東京で将棋の豆天才を探してもらいたいな。床屋の鼻たれよりも二三年下で、あの鼻たれをグウの音もでないほど打ち負かすことのできる滅法強い子供をな。しかし、なんだな。見たところは甚だ貧弱で、脳膜炎をわずらったことがあるようなナサケないガキがいいなア。