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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
「旦那さま、大変でございます。お嬢さんが……。」
「妹がどうした。」と、西岡もあわただしく訊きかえした。
「いつの間にか冷たくなっておいでのようで……。」
西岡もおどろいたが、叔父も驚いた。ふたりは佐助と一緒に西岡の屋敷の門をくぐると、下女のお霜も泣き顔をしてうろうろしていた。お福は奥の四畳半の肱かけ窓に倚りかかったままで、眠り死にとでもいうように死んでいるのであった。勿論、すぐに医者を呼ばせたが、お福のからだは氷のように冷たくなっていて、再び温かい血のかよう人にならなかった。
「あの女はやっぱり魔ものだ。」
西岡は唸るように言った。
三
たった一人の妹をうしなった西岡の嘆きはひと通りでなかった。しかし今更どうすることも出来ないので、叔父や近所の者どもが手伝って、型の通りにお福の葬式をすませた。
「畜生。今度見つけ次第、いきなりに叩っ斬ってやる。」
西岡はかたきを探すような心持で、その後は努めて市中を出あるいて、かの怪しい娘に出逢うことを念じていたが、彼女は再びその姿を見いだすことが出来なかった。
おなじ江戸川端ではあるが、牛込寄りのほうに猪波図書という三百五十石取りの旗本の屋敷があった。