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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
その隠居は漢学者で、西岡や叔父はかれについて漢籍を学び、詩文の添削などをしてもらっていた。隠居は采石と号して、そのころ六十以上の老人であったが、今度の西岡の妹の一条についてこんな話をして聞かせた。
「その娘は他人の空似で、妹は急病で頓死、それとこれとは別々でなんにも係合いのないことかも知れないが、妹の死ぬ朝には浅草でその姿を見せて、その晩にも屋敷の門前にあらわれたということになると、両方のあいだに何かの絲を引いているようにも思われて、西岡が魔ものだというのも一応の理屈はある。しかし世の中には意外の不思議がないとは限らない。それとは少し違う話だが、仙台藩の只野あや女、後に真葛尼といった人の著述で奥州咄という随筆風の物がある。そのなかにこういう話が書いてあったように記憶している。
仙台藩中のなにがしという侍が或る日外出して帰って来ると、自分の部屋の机の前に自分と同じ人が坐っている。勿論、うしろ姿ではあるが、どうも自分によく似ている。はて、不思議だと思う間もなく、その姿は煙りのように消えてしまった。あまり不思議でならないので、それを母に話して聞かせると、母は忌な顔をして黙っていた。