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ふうてんろうじんにっき
瘋癲老人日記
谷崎 潤一郎
「中央公論」中央公論社、1961(昭和36)年11月~1962(昭和37)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,490 字 · 196 页
大小便の失禁がある。全発作は約十二三分、深い睡眠に入る。
午後一二時一五分、附添中の老夫人が急に眩暈を訴えたので、別室に運んで静かに寝かせる。一〇分ほどで恢復。老夫人の看護は五子夫人が引き受ける。
一二時五〇分、患者安眠。脈搏八〇、呼吸一六。颯子夫人入室する。
一三時一五分、杉田医師帰宅、面会謝絶の指示がある。
一三時三五分、体温三七・〇度、脈搏九八、呼吸一八。時々咳嗽あり、全身冷汗強度、寝衣を交換する。
一四時一〇分、親戚の小泉医師来訪。病状経過を報告する。
一四時四〇分、覚醒。意識明瞭。言語障害なし。顔面、頭部、項部にわたり打撲様の疼痛を訴える。発作前の左上肢の疼痛は消失している。小泉医師の指示によりサリドン一錠、アダリン二錠投与。颯子夫人を認めたるも静かに眼を閉じている。同五五分、自然排尿あり。一一〇cc、溷濁なし。二〇時四五分、強い口渇を訴える。颯子夫人の手からミルク一五〇cc。野菜スープ二五〇ccを与える。
二三時五分、浅眠状態。老人は既に完全に覚醒し、危険状態を脱したようではあるが、再発の怖れがないとは云えないので、なお念のため東大梶浦教授の診察を乞うた方がよいと云うことになり、夜おそくではあったけれども浄吉氏が教授をつかまえて伴って来る。