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はくとうのうた

白塔の歌

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 页

青空文庫

ただね、僕は君達に自重して貰いたいんだ。自重してくれ給え。お父さんが今晩来られないのはよかった。」

「父はそんなことを知ってるんでしょうか。」

「御存じではあるまい。然し、うっかり洩らしてはいけないよ。僕と君との間だけの秘密だ。」

「それは勿論です。だが……僕達、汪紹生と僕とを招かしたのは、柳秋雲だとばかり思っていました。」

「どうしてだい。」

「彼女も、僕達の仲間でしたから……。」

「だが、陳慧君のところに戻ってからは、彼女も相当変ったろう。それにまた、たとい彼女がいい出しても、それを取上げるかどうかは陳慧君の自由だからね。陳慧君は育て親として、彼女の上に絶対の権力を持っている。」

「それを、あなたは承認しますか。」

「事実の問題だ。第三者の否認なんか、当事者には何の役にも立たない。」

「ひどく冷淡ですね。」

「女の問題について冷淡なのは、僕の立前だ。女はどうも危険だからね。」

そして高賓如は朗かに笑いました。

その時、二人は庭を一廻りして、室の方へ戻ってゆくところでしたが、そこの、外廊の柱によりかかって、柱にそえた彫像のように佇んでいる汪紹生に出逢いました。

汪紹生は潜思的な固い顔を少しも崩さず、荘一清にぶっつけるようにいいました。