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ひゃくしょうのゆめ
百姓の夢
小川 未明
「女性日本人 4巻1号」1923(大正12)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,278 字 · 15 页
百姓がこのごろ手に入れたばかりの、若い黒い牛は、水を臆せずにずんずんと池の中に向かって走るように歩いていきました。
このとき、百姓は、後悔しました。これが前の年とった牛であったら、こんな乱暴はしなかろう。そして、自分がこんなに心配することはなかったろう。あの年とった牛は、一度、暗い雪の降る夜、自分を助けたことがあった――あの牛なら、子供を乗せておいても安心されていたのに――と思いながら。彼は、大いに気をもんでいました。
彼は、もはや、じっとして見ていることができずに、その後を追っていきました。すると、すでに、牛は、自分の子供を乗せたまま池の中へどんどんと入っていきました。
「どうする気だろう。」
百姓は、たまげてしまって、さっそく裸になりました。そして、自分も池のふちまで走っていったときは、もうどこにも牛の影は見えなかったのであります。
彼は、のどが渇いて、しかたがありませんでした。草を分けて池の水を手にすくって、幾たびとなく飲みました。
このとき、太鼓の音と、笛の音は、遠く、池を越して、あちらの月の下の白いもやの中から聞こえてきました。
あの牛は、どうして水音もたてずに、この池を泳いでいったろう? 百姓は、とにかく子供たちが無事なので、安心しました。