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ひゃくしょうのゆめ

百姓の夢

小川 未明

「女性日本人 4巻1号」1923(大正12)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,278 字 · 15 页

青空文庫

どこが、田やら、圃やら、見当がつかなくなりました。そして、暗くなると、もう一足も歩けなかったのです。

百姓は、こうなると、牛をしかる元気も出なくなりました。たとえ、いくら牛をしかってもなぐっても、どうすることもできなかったからであります。

「さ、困ってしまった。」といって、ぼんやり手綱を握ったまま、百姓は道の上にたたずんでいました。いまごろ、だれもこの道を通るものはありませんでした。

天気が悪くなると、帰る人たちは急いで、とっくに帰ってしまいました。また、朝のうちから天気の変わりそうなのを気遣って、出る人も見合わせていたので、日の暮れた原中では、一人の影も見えなかったのであります。

百姓は腹がすいてくるし、体は寒くなって、目をいくら大きく開けても、だんだんあたりは暗く、見えなくなってくるばかりでした。

彼は、どうなるかと思いました。道を迷って、小川の中にでも落ち込んだなら、牛といっしょに凍え死んでしまわなければならぬと思いました。

百姓は、まったく泣きたくなりました。ことに、

「ほんとうに、今日こなければよかった。来年の春まで、この牛を飼っておくことに、最初からきめてしまえばよかった。