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ひゃくしょうのゆめ
百姓の夢
小川 未明
「女性日本人 4巻1号」1923(大正12)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,278 字 · 15 页
だいいち、これまで使って、この冬にかかって、知らねえ人の手に渡すのはかわいそうだ。」といいました。やむを得ず、百姓は、また牛を引いて我が家に帰らなければならなかったのです。
「ほんとうに、ばかばかしいことだ。」
百姓は、ぶつぶつ口の中でこごとをいいながら、牛を引いてゆきました。
朝のうちから曇った、寒い日であったが、晩方からかけて、雪がちらちらと降りだしました。百姓は、日は暮れかかるし、路は遠いのに、雪が降っては、歩けなくなってしまう心配から、気持ちがいらいらしていました。
「さあ早く歩け、この役たたずめが!」とどなって、牛のしりを綱の端で、ピシリピシリとなぐりました。牛はいっしょうけんめいに精を出して歩いているのですけれど、そう早くは歩けませんでした。雪はますます降ってきました。そして、道の上がもうわからなくなってしまい、一方には日がまったく暮れてしまったのであります。
「こんなばかなめを見るくらいなら、こんな日に出てくるのでなかった。」と、百姓は、気持ちが急ぐにつけて、罪もない牛をしかったり、綱で打ったりしたのであります。
この町から、自分の村へゆく道は、たびたび歩いた道であって、よくわかっているはずでありましたが、雪が降ると、まったく、あたりの景色は変わってしまいました。