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すかいさんきこう

皇海山紀行

木暮 理太郎

「山岳 一六の三」1923(大正12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,720 字 · 24 页

青空文庫

奥白根はかなり雪が白く、峰頭をかすめて雲が去来する毎に、研ぎ澄した鏡のように光る雪面が曇ったり輝いたりする。庚申山の如きはいわゆる俯してその髻をとるべしという形だ。庚申講の先達がこの山を開いて奥院とした訳がなるほどと肯かれる。脚の下から北に走る国境山脈は、三俣山(千九百八十米、上州方面の称呼である。支脈東に延びて黒松岳、社山等を起し、中禅寺湖の南を限る。)でも宿堂房山でも、黒木の繁っているのはよいとしても、その間は一面の笹であるには驚いた。秩父の雲取山から金峰山に行く位の積りで、袈裟丸山から奧白根まで縦走して見ようかと思ったが、この笹ですっかり辟易してしまった。

二時半に三角点を辞して、少し東に下ると例の剣が建ててある。国境はそれよりも更に東寄りで、東北に向った切明の跡は密生した若木に閉され、殆んど足の踏み入れようもない。南に向うものは疎らな笹の中を下るので、甚しく邪魔されるようなことはなかった。下り切るとやや深い笹を分けて二つの隆起を踰えた。三時三十五分である。二つ目の隆起は、字クワノキ平の標木があった。食慾減退の祟りがそろそろ現れて来たようだ。