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めらはかせのふしぎなはんざい
目羅博士の不思議な犯罪
江戸川 乱歩
「文藝倶楽部 探偵小説と滑稽小説号」博文館、1931(昭和6)年4月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,493 字 · 31 页
自分も同じ様に目をとじないではいられなくなるのではありませんか。
で、つまり鏡の影と一致させる為に、僕は首を吊らずにはいられなくなるのです。向側では自分自身が首を吊っている。それに、本当の自分が、安閑と立ってなぞいられないのです。
首吊りの姿が、少しも怖しくも醜くも見えないのです。ただ美しいのです。
絵なのです。自分もその美しい絵になり度い衝動を感じるのです。
若し月光の妖術の助けがなかったら、目羅博士の、この幻怪なトリックは、全く無力であったかも知れません。
無論お分りのことと思いますが、博士のトリックというのは、例の蝋人形に、こちらの部屋の住人と同じ洋服を着せて、こちらの電線横木と同じ場所に木切れをとりつけ、そこへ細引でブランコをさせて見せるという、簡単な事柄に過ぎなかったのです。
全く同じ構造の建物と、妖しい月光とが、それにすばらしい効果を与えたのです。
このトリックの恐ろしさは、予めそれを知っていた僕でさえ、うっかり窓枠へ片足をかけて、ハッと気がついた程でした。
僕は麻酔から醒める時と同じ、あの恐ろしい苦悶と戦いながら、用意の風呂敷包みを開いて、じっと向うの窓を見つめてました。