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めらはかせのふしぎなはんざい
目羅博士の不思議な犯罪
江戸川 乱歩
「文藝倶楽部 探偵小説と滑稽小説号」博文館、1931(昭和6)年4月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,493 字 · 31 页
何と待遠しい数秒間――だが、僕の予想は的中しました。僕の様子を見る為めに、向うの窓から、例の黄色い顔が、即ち目羅博士が、ヒョイと覗いたのです。
待ち構えていた僕です。その一刹那を捉えないでどうするものですか。
風呂敷の中の物体を、両手で抱き上げて、窓枠の上へ、チョコンと腰かけさせました。
それが何であったか、ご存じですか。やっぱり蝋人形なのですよ。僕は、例の洋服屋からマネキン人形を借り出して来たのです。
それに、モーニングを着せて置いたのです。目羅博士が常用しているのと、同じ様な奴をね。
その時月光は谷底近くまでさし込んでいましたので、その反射で、こちらの窓も、ほの白く、物の姿はハッキリ見えたのです。
僕は果し合いの様な気持で、向うの窓の怪物を見つめていました。畜生、これでもか、これでもかと、心の中でりきみながら。
するとどうでしょう。人間はやっぱり、猿と同じ宿命を、神様から授かっていたのです。
目羅博士は、彼自身が考え出したトリックと、同じ手にかかってしまったのです。小柄の老人は、みじめにも、ヨチヨチと窓枠をまたいで、こちらのマネキンと同じ様に、そこへ腰かけたではありませんか。