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めらはかせのふしぎなはんざい
目羅博士の不思議な犯罪
江戸川 乱歩
「文藝倶楽部 探偵小説と滑稽小説号」博文館、1931(昭和6)年4月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,493 字 · 31 页
僕は人形使いでした。
マネキンのうしろに立って、手を上げれば、向うの博士も手を上げました。
足を振れば、博士も振りました。
そして、次に、僕が何をしたと思います。
ハハハ……、人殺しをしたのですよ。
窓枠に腰かけているマネキンを、うしろから、力一杯つきとばしたのです。人形はカランと音を立てて、窓の外へ消えました。
と殆ど同時に、向側の窓からも、こちらの影の様に、モーニング姿の老人が、スーッと風を切って、遙かの遙かの谷底へと、墜落して行ったのです。
そして、クシャッという、物をつぶす様な音が、幽かに聞えて来ました。
………………目羅博士は死んだのです。
僕は、嘗つての夜、黄色い顔が笑った様な、あの醜い笑いを笑いながら、右手に握っていた紐を、たぐりよせました。スルスルと、紐について、借り物のマネキン人形が、窓枠を越して、部屋の中へ帰って来ました。
それを下へ落してしまって、殺人の嫌疑をかけられては大変ですからね」
語り終って、青年は、その黄色い顔の博士の様に、ゾッとする微笑を浮べて、私をジロジロと眺めた。
「目羅博士の殺人の動機ですか。それは探偵小説家のあなたには、申し上げるまでもないことです。