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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
ことも出来るであろうと、かようにかんがえました次第でござります。
さても/\わたくしは、めしいのうえにせいらい至っておくびょうでござりまして、かりにもひとさまをあざむくことはよういたしませなんだが、てきがたの間者にかたんをいたしておしろに火をかけ、あまつさえおくがたをぬすみ出そうとくわだてましたとは、われながらおそろしいこゝろでござりましたけれども、これもひとえにおいのちをおたすけ申したいゝちねんゆえでござりますから、つまるところは忠義になるのだとりょうけんをきめておりました。そうこういたしますうちに、みなさまおなごりはつきませぬけれども、はつなつの夜のあけやすく、はや遠寺のかねがひゞいてまいりお庭の方にほとゝぎすのなくねがきこえましたので、おくがたは料紙をとりよせられまして、
さらぬだにうちぬる程も夏の夜の
わかれをさそふほとゝぎすかな
と、一首の和歌をあそばされ、つゞいてとのさまも、
夏の夜の夢路はかなきあとの名を
くもゐにあげよやまほとゝぎす
とあそばされまして、文荷さいどのがそれを一同へ御披露におよばれ、「それがしも一首つかまつります」