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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

のは、こゝろならずも奥がたがごしょう香をなされたのでござりました。それから一のひめぎみのお茶々どの、二の姫ぎみのおはつどの、三のひめ君の小督どのと、しだいに御えこうをなされましたので、そのよのかた/″\もとゞこおりなく済まされたのでござります。

さてその石とうをはこび出してこすいにしずめましたことは、せんこく申し上げたとおりでござります。おくがたはひと/″\の手まえ、いったんはおきゝいれになりましたものゝ、殿が御しょうがいあそばすのに、わがみひとり世にながらえてなんとしょうぞ、あれこそ浅井のにょうぼうよと人にうしろゆびをさゝれるのはくちおしゅうござります、ぜひ死出のみちづれをさせて下されと、よもすがら掻きくどかれて、いっかな御しょういんなさるけしきもなかったそうにござります。するとあくる二十八にちの巳の刻ごろに、織田どのゝおんつかい不破河内のかみどのが三度目におこしになりまして、いま一ぺんかんがえなおして降人に出る気はないかと、のぶなが公のおことばをつたえましたのでござります。ながまさ公はかさね/″\のおぼしめし、しょう/″\世々わすれがたくは存じますが、じ