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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
ぶんはどうあってもこのしろにおいてはらを切ります、たゞし妻とむすめどもはおんなのことなり、のぶなが公にちすじのつながるものどもでござれば、申しふくめてあとより送りとゞけます、せっかくのおなさけにあのものたちのいのちをゆるして、あと/\のせわを見てやって下さればありがとう存じますと、いんぎんにおたのみなされまして、一とまずかわちの守どのをおかえしになり、それから又おくがたへだん/\と御いけんをなされたらしゅうござります。もとよりながまさ公とても、あれほどおむつまじいおん語らいでござりましたから、死なばもろともと覚悟をなされたおくがたのおんこゝろねを何しに憎く思しめしましょう。おもえばおふたりが御えんぐみをあそばしてから、ことしで足かけ六ねんと申すみじかいおんちぎりでござります。そのあいだしゞゅう世の中がさわがしく、あるときはとおく都や江南の御陣へお出かけになったりしまして、いちにちとしてあんらくにおすごしあそばしたこともないのでござりますから、おなじはちすのうてなの上でいつまでも仲ようくらしたいとおのぞみになるのも、決してごむりではござりませぬ。