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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
なれどもながまさ公は勇あるおかたのつねとしてひとしおおん憐れみがふこうござりまして、おとしのわかいおくがたをむざ/\ころしてしまうことがあまりおいたわしく、なんとかしていのちをたすけてあげたいとおぼしめされ、ことにはお子たちのゆくすえなども御あんじあそばしたのでござりましょう。まあいろ/\にしなをかえて道理をおときになったものとみえまして、よう/\おくがたも御とくしんあそばし、ひめぎみばかりをおつれになっておさとへお帰りあそばすことにきまったのでござります。おとこのお子たちはまだいとけのうござりましたけれども、敵の手におちてはあやういと申されて、総りょうのまんぷく丸どのはえちぜんのくに敦賀郡のしるべをたよりに、二十八日の夜おそく、きむら喜内之介と申す小姓をつけてそっとおしろからお出しになり、すえの若ぎみは、当国の福田寺へあずけられることになりまして、これもその夜のうちに、小川伝四郎中島左近と申すさむらい二人に乳母がつきそうて、ふくでん寺のちかくの湖水のきしに船をよせられ、しばらく蘆のしげみのあいだにひそんでおられたと申すことでござります。