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かみさまのふとん

神様の布団

下村 千秋

「赤い鳥」赤い鳥社、1925(大正14)年4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,585 字 · 10 页

青空文庫

でも、しばらくじっと我慢していますと、また同じ子供の声がするのです。

お客はがたがたふるえながら、なおも、聞き耳を立てていますと、また同じ声がします。しかも、その声は、自分のかけている布団の中から出て来るではありませんか。――掛け布団が物を言っているのです。

お客は、いきなり飛び起きると、あわてて着物を引っかけ、荷物をかき集めてはしご段を駆け下りました。そうして、寝ている主人を揺り起こして、これこれこうだと、今あったことを息もつかずに話しました。

しかしあんまり不思議な話なので、主人はそれをどうしても信じることが出来ませんでした。商人はあくまでほんとうだと言い張ります。商人と主人とは、互いに押し問答をしていましたが、とうとうしまいに主人は腹を立てて、

「馬鹿なことをおっしゃるな。初めての大切なお客さまを、わざわざ困らせるようなことをいたすわけがありません。あなたはお酒に酔っておやすみになったので、おおかた、そういう夢でもごらんになったのでしょう。」

と、大きな声で言い返しました。けれどもお客は、いつまでもそんなことを言い合ってはいられないほど、おじ気がついていたので、お金を払うと、とっとと、その宿を出て行ってしまいました。